北~中部イタリアでよく食べられる「ポレンタ」ってご存知ですか?
とうもろこし粉を水やダード(いわゆる“ダシ”)で練って練って練りまくる、そういう食べ物です。
あまり好き嫌いは無い私ですが、「ポレンタ」は苦手意識がある「食べ物」でした。
私のポレンタ苦手暦:
その1: 最初にポレンタと出合ったのは、かれこれ15年くらい前。初めて大勢のイタリア人と一週間くらいを共にしたときの事でした。
「今晩はなにを食べるの?」食いしん坊の私の質問に、「ポレンタ・コンチャだよ~」とまるで「フェッラーリ!」という時と同じような口ぶりで答えてくれたのが、とても印象的でした。
その頃(今も)私はモータースポーツが大好きで、彼ら(イタリア人たち)は、ヨーロッパ各地のF1の試合を見ながら知り合った、「フェッラーリ・クラブ」のおじさんたち。
彼らが「フェッラーリ!」という時は何か特別の感情がこもっているとしか言いようがなく、目も少し輝き気味、というかウットリ気味。まだそんなにイタリアを知らなかった私には不思議な一瞬でした。しかも私は大のアイルトン・セナファンで、もちろんホンダを応援していましたから、かなりライバルだったんですけど。。。
そんな彼らが、ご自慢の郷土料理として、「フェッラーリ!」と同じように表現した「ポレンタ・コンチャ」。はるばる車で30分も、こんなトコにレストランなんてあるのォ~~、みたいな山奥に連れて行ってくれて、食べさせてもらったいろいろな料理の中の1品が「ポレンタ・コンチャ」でした。(後からわかりましたが、イタリア人が外で食事をするというと、こういうちょっと想像もつかない遠いところへよく行ったりします。)
ドロドロとうもろこしの中にチーズとバターがたっぷり入った黄色の練り物「ポレンタ・コンチャ」。初めて食べる私の一さじを見つめる彼らのまなざし。それまでいろいろとおいしいものは食べてきたつもりでしたがぁ、好き嫌いは無いと思っていましたがぁ、でも。どうしても、積極的に「好き」といえない味でした。
「どう?」と聞かれた私はどう言い表していいわからず、かなり若かったし!素直なので!「あまり好きではない」と標準で話す声より小さめの声で言いました。
そのときの彼らのがっかりした顔ったら、今でも思い浮かばれるほど。そして、私の周りの席から、20人ほど座っていた大テーブルの端の方まで「Yukikoはポレンタが嫌いらしい、嫌いらしい、・・・・、、、、」と次々に広まって、それと同時に「がっかり顔」も次々と広まっていったのを克明に覚えています。「まずいこと言っちゃったかな?」と思いましたが、その様子がまるでイタリア映画のシーンのようで、なんていうか、すごく可笑しかったです。もちろん、こんなことで友情が途絶えたわけではなく、今でも仲良し。(ご心配なく) いわゆる、「ライバルな私!」にもとても良くしてくれて、今から思うと皆さん大人だったというか、イタリア人らしいというか。
その2: フィレンツェでホームステイをしていたある晩。ホストファミリーのマンマが今日は特別ディナーよ~。とニコニコしているので「なに?」と聞きましたら、「ポレンタ!それもトリュフ味~」と鼻を膨らませていました。私は一瞬固まってしまいましたが、「楽しみ~」などと心にも無いことが口を突いて出てしまって。。。
そう、この晩は「ポレンタのトリュフ風味」。いわゆる少し高級なお料理だったのです。ステイしていたのは私とスイス人の女の子。私はスイス人だからポレンタもトリュフも好きなのかな、と勝手に解釈。一応2人とも黙々とだっまって1皿は食べました。いつもお代わりをいただいていた私ですが、今回は「パス」。スイス人もパスしていました。ところがいつもはきっちりプリモ、セコンドと出てくる毎日でしたが、その日は、トリュフで予算オーバーだったのかもしれません、このポレンタだけだったんです。仕方なく我々はフルーツを食べて退散。後でわかったことですが、スイス人の彼女もポレンタもトリュフも苦手だったとか。二人でふき出してしまいました。※因みに私はトリュフは大好き。なので、1皿分は食べられたのだと思いました。
そして、この度モンテ・ビアンコで、Ezio(エツィオ)とCinzia(チンチア)がポレンタを食べよう!というではありませんか。私は乗り気ではありませんでしたが、もしかしたらヴァーレ・ダオスタのポレンタは違うかも?と思って同じものを頼んでみました。すると、ラッキー!その日はポレンタが売り切れ。『は~助かった~』心の中でそう叫びました。そして、違うお料理をいただいたのです。
次の晩、チンチアが「昨日は食べられなかったから、今日は私がポレンタを作ってあげる」そういったのです。「作って、
アゲル」そういわれたら断れないじゃないですか、普通。大人になったし。
そして、出てきたのがこちら:
練りに練り上げた上げた黄色の美しいポレンタ

イタリアのSalsiccia(ソーセージ)左とFunghi Porcini(フンギ・ポルチーニ茸)右

お皿で一緒に
これが、美味しかったんです!
ポレンタが美味しいって、初めて思えたこの瞬間!(一生忘れません!!!)
チンチアに感謝します。ポレンタ嫌いが直りました。練る時は要領があるらしく、娘のMarta(マルタ)にかなり厳しく指導していましたが、これも母の愛情なのでしょう。Marta!美味しいポレンタを作れるようになるんだよ。
右がMarta

トスカーナの友人はこのポレンタが固くなったものを、揚げてキノコのソースなどをつけて食べるのが好き、と言っておりました。というとこで、次回はポレンタのフリットと、なにか季節のソースでいただくのが楽しみになったのです。なんて、ゲンキン者の私。
「北イタリアで、好き嫌いが1つ直った」というお話でした~
ではまた~