久々にオリーヴオイル生産者のお話。
私がオリーヴオイルの仕事を始めて5年になりますが、最初のころからお付き合いのある「ディ・パスクアーレ社」。
イタリアのアブルッツォ地方にあります。アブルッツォってどこ?って思われる方も多いと思いますが、観光地があまりないので日本の方は行かれない地方です。でも、オリーヴオイルとワインは美味しくて有名で、恐らくモンテプルチャーノ・ダブルッツォというワインを飲んだことがある方は多いかと思いますが、これはモンテプルチャーノ種(葡萄の品種)で作った「ダブルッツォ=アブルッツォ地方の」ワインということです。けっこうお安く手に入るのでよろしかったら、ぜひ。
ボローニャからマルケを抜けてさらに南下。ユーロスター(エウロスター)で約3時間ほどです。
もちろん畑はそこからさらに遠くにあります。
アドリア海からの海風と2000m級のマッサ山からの冷たい風がこの地方のオリーヴオイルを美味しくしています。
この「ディ・パスクアーレ社」でオリーヴオイルの管理を一手に担っているGennaro Montecchia ジェンナーロ・モンテッキア氏は、まだオリーヴオイルについて何も知らない私に懇切丁寧にいろいろと教えてくれたいわば私の師匠、恩師の一人です。
モンテッキア氏とMassimo(マッシモ)君(大きい方)とMarco(マルコ)君(弟君):

ひげもじゃで強面だけど、ものすごく優しくて、行動力があるジェンナーロ。
収穫期は24時間体制で収穫&搾油を繰り返します。寝ないで働くFrantoiani(フラントイアーニ・搾油人たち)のつかの間の楽しみ、夕食。その場を離れられないのでこの期間は皆搾油所で食事を取ります。ですのでジェンナーロの奥さんも寝ないでマカナイを作ります。

疲れているけど、ウレシそうなみんな。
ディ・パスクアーレの畑では5種類のオリーヴの実を育てています。それぞれに搾るとこんなに色が違います。味も香りも違います。おもしろいでしょう?

でも、オリーヴオイルは色によって判断しませんから、この違いは良し悪しの材料にはなりません、あしからず。
オリーヴの木の間に見える茶色の物体=オリーヴの搾りかす
搾りかすにも多少の油分が含まれているので肥料としては抜群。畑の土壌改良に役立ちます。オリーヴって無駄なところがないんですよ~。
オリーヴオイルは植物油ですが、他の植物油と違うところは農業製品だという点でしょう。
普通植物油は種からとりますが種は輸入も可能ですしストックして1年中搾ることが出来ます。でも、オリーヴの実は輸送に耐えない特長を持っているのでその場で搾らなければいけません。ストックも出来ないので摘み取ったらすぐに搾ります。ですから収穫期(10月の後半~12月半ば(地方によって、天候によって違う)の約2ヶ月間に1年分を搾らないといけないんです。
もちろん、天候によって味も香りも変わりますし、搾油量も違います。ですから、農業製品ということが出来るのです。日本では、毎年ワインの出来不出来を語る習慣があるのに、オリーヴオイルについてはまだ語られることはあまりないようです。早くそんな日が来ることを夢見て!
ディ・パスクアーレ社は、「シノレア方式」という方法でオリーヴオイルを搾っています。シノレアは、搾油中に一切プレスをかける工程、空気に触れる工程がなく、非常に良質のオイルをつることが出来る方法です。それまで、
伝統製法が良いと思っていた私には、これは衝撃でした。いかに良いオリーヴオイルを作ることがたいへんで、それには何が大切かを教えてくれた最初の生産者さんがジェンナーロだったのです。今ではオリーヴオイルを追い掛け回して、いろいろな人と出会いますが、彼は、私がこの「グルグル追いかけ仕事」を始めた最初の頃に出会った大切な恩師です。
除草剤、農薬を撒かない健康なディ・パスクアーレの畑。
ではまた~