この前出てきた変てこな駅の時刻掲示板があったピアチェンツァでのこと
同時多発テロ以来、主要駅以外での手荷物預りシステムが無くなってしまったイタリア。ピアチェンツァ駅もそのひとつ。例によって大きな重たいスーツケースを持った私は駅でボーゼン。「この荷物、どうしよう?」街まではタクシーで10分くらい。とにかく街まで行って見よっか、ということで中心街へ。ところがインフォメーションもホテルも荷物を預かることはNO!仕方なく街中をスーツケースと共に移動。教会も貴族のお屋敷もみーんなコブ(スーツケースのこと)付。
ピアチェンツァ市内で見つけた可愛いサルメリーア(サラミやハムの専門店)
あまりに重たいコブちゃんと一緒だったので、そろそろ引き上げようと、街の中心からタクシーに電話すると、「さっきの日本人の女の子?」というではありませんか。行きに乗ったタッシスタ(ドライヴァー)だったのです。私がピアチェンツァで美味しいものは何?としきりに質問していたのでよく覚えていたのでしょう。到着するなり「Destino(デスティーノ)運命!」などとイタリア人らしく大げさな振りで現れました。「駅に戻るの?それとも昼食にするの?」と聞かれ「私たち電車の時間があるから、すご~く残念だけど」と駅までお願い。「駅周辺はあまり美味しいところがないんだよ、ピアチェンツァは」。と残念そうなタッシスタ。「駅横のビルに入っているファスト・フードっぽいものが一番早く食べられるよ」、とアドバイスしてくれました。内心、他にも食べるところぐらいあるはずだよねぇ、などど思いながら窓の外を眺めていると、駅のすぐそばに「Trattoria(トラットリア)」の看板が見えるじゃありませんか。おじさん適当なこと言っちゃって!トラットリアあるじゃない。。。と心の中でつぶやき、タクシーを降りて、そのトラットリアの方へ行って見ました。すると看板に「Italo-Cineseイタロ・チネーゼ」と書いてあるのです。いたろ・ちねーぜ???別の言い方をすれば、イタリアン・チャイニーズ。それってどうゆーこと?イタリア料理と中華料理を両方出すっていうの~~~?そんな変な取り合わせ、イタリアでは初めて。ミラノあたりではチネーゼ・ジャッポネーゼの組み合わせはあるけど、それなら日本食と中華で近いっちゃちかいでしょう?理解の範囲でしょう?でも、イタリアンと中華ってホテルのバイキングじゃないんだから。春巻き、ショーロンポーとサルーミ・ミスティ(ハムの盛り合わせ)みたいなのが一緒に出てくるって事?それとも、もしかして「八宝菜のあんかけスパゲッティ」みたいなものが出てくるのでしょうかぁぁ?想像を超えた味の世界。それもイタリアで。とほほほほ。ごめんなさい、おじさんの言ったとおりね。
仕方なく私たちは駅の横のファスト・フードで我慢することに。するとどうでしょう。このファスト・フードの看板にも「イタロ・チネーゼ」って書いてあったんです!ピアチェンツァってどーゆートコ?要するに中国人がやっているレストランで、中華だけだとイタリア人が来ないからイタリア料理も出しているって、想像するとそんな感じでしょうか。駅前の土地、中国人に買われちゃったんですね、きっと。ピアチェンツァは観光地ではないので、他の国の人だってあんまり来ないでしょうから、中華料理だけだと食べる人少ないのかも。
私は何気なくかばんの中の電車のチケットを取り出して時間を見ました。
13:50発と思っていた電車はなぜか16:53発だったのです。がっが~~~ん。時間あるじゃなーい。妹はすごく怒ってもいましたが、このどちらも選びたくない二者択一の食事から解放されるという気持ちからでしょうか、即決で「街に戻ろう!」と言ったのです。タクシー乗り場に行きました。何台か待っている一番前のタクシーは車をほったらかして、運転席には誰もいませんでした。のんびりしている~。「お客さんだよ~」と他のタッシスタが目の前のBARに呼びにいきますと、出てきたのが先ほどのタッシスタ。「Destino!(デスティーノ)」今度は私がそう叫びました。はーっははは、「私ね、電車の時間間違えてたの、おじさんが言っていた美味しいお店に連れて行って!」おじさんは二つ返事で連れて行ってくれました。ピアチェンツァの中心街のもう少し奥に入った路地にあるトラットリア。イタロ・チネーゼと書いていない正真正銘の地元民のイタリアンでした!残念ながら、お目当てのピアチェンツァ名物は無かったけれどもタッシスタの行きつけらしく、強面の、でもすごくやさしいオーナーがいろいろと美味しいものを出してくれました。やっぱりサルーミ類(サラミや生ハム)は最高に美味しかったし、ブロード(ブイヨン仕立て)のトルテッリもここは美味しかった(というのは、ハズレが多い料理なので)。もうそろそろたらふく食べ終わって、タクシー頼もうかと思っていましたら、やってきましたさっきのタッシスタ。近くを通ったから寄ってみたんだよ、だって。私たちが食べ終わる頃を見計らってきたんだと思うけど、ま、いいか。
結局このおじさんのタクシー1日で計4回乗ったことになりました。
ピアチェンツァって小さい街だけど、そんなに小さくも無いんですよ(判りにくいですね!)。判りやすく言えば、タクシーは1台じゃないってこと。なので、1日に4回同じタッシスタに会うってそうは無いと思います。
「イタロ・チネーゼ」っていうトラットリア。16:92発の電車。ピアチェンツァってミラクルワールド。
特別な街ではないけれど、マニアックな不思議に出会える街です。でも、ピアチェンツァ市民は、すっごく優しい。ミラクルだけど生活は豊か、そんな印象の街でした。
ではまた~